部下にキツい言い方をやめるための「アサーティブコミュニケーション」上手な怒りの伝え方

仕事中、ついイライラしてしまうことってありますよね。
そういう時、どうしていますか?
とりあえず我慢するでしょうか。
我慢しても態度に出てしまったり、きつい一言を言ってしまうこともあるかもしれません。
私も我慢するんだけど、怒りが態度ににじみ出てしまったり、「わからないことがあるなら聞いてください(怒)」と、キツい言い方をしてしまって後で嫌な気分になったことが何度もありました。
でも、伝えないのもイライラするんですよね。
我慢すればするほど怒りがぎゅっと凝縮されてイライラする感じがしていました。
イライラするということは、何か相手に「もっとこうしてほしい」とリクエストがあったり、大切にしたいことがあったりするはずです。
だからそれを知るためにイライラしてもいいし、上手に伝えられたら伝えていいのです。そして、そのリクエストが上手に伝えられたら、イライラって落ち着いてくるものです。
ここでは自分のリクエストを上手に伝えるためのアサーティブコミュニケーションについて、また上手に活用するために意識したいポイントについてご紹介します。
目次
アサーティブコミュニケーションって何?
アサーティブコミュニケーションは、簡単に言うと怒りを含め、いろんなこと意見や感情を上手に伝える方法です。
アサーティブコミュニケーションはアサーティブネス(Assertiveness)という言葉から来ています。自己主張、相手も自分も尊重した自己表現という意味です。自分の意見を表現しつつも、相手の意見も大切にするためのコミュニケーションです。人間関係を壊さないで、自分も我慢しない方法と言えるかもしれません。
アサーティブコミュニケーションの4つの柱
まずはアサーティブコミュニケーションの柱になっている考え方を4つご紹介します。この4つの柱を聞けばアサーティブコミュニケーションの目指すところがわかります。4つの柱を意識するだけでも、上手に怒りを伝える助けになりそうです。その柱とは、誠実、率直、対等、自己責任です。
誠実
何を感じているか蓋をしないこと。自分自身に誠実になること。
怒りをストレートに表現することを我慢すると、自分が感じていることをちゃんと感じない可能性があります。でも、怒りがあると言うことは何かが嫌だったり、何か相手に対してリクエストがあったりする時です。まずはしっかりそれを感じることが重要です。自分の話を聴くことや自分の気持ちを大切にすることは相手を大切にしたコミュニケーションにつながります。
率直
遠回しではなくストレートに、相手に伝わる言葉にすること。
よくアイメッセージとも言われます。「みんなが」「普通は」ではなく「私は」で感じていることや意見を伝えます。「わかってほしい」「察してほしい」「これをするのが当たり前」だと伝わることも伝わらなくなってしまいます。状況や相手に合わせて言葉を選びながらも素直な表現が吉です。表現を調整できれば自分の気持ちを相手に伝えることは相手との信頼関係を深めることにもなります。
対等
上から目線になったり、卑屈になったりせず平等な態度、心持ちでいること。
会社での立場が上だと上から目線になってしまうこともあるかもしれません。また、イライラすると相手に負けたくないとか、自分が正しい、認められたい、謝って欲しいとか、そんな気持ちも出てくるものだと思います。そういう時でも、相手も自分と同じいろんなことを考えている平等な人なのだということを忘れずに、相手の意見や世界観を尊重する気持ち、対等に接する気持ちを持つことが大切です。
自己責任
コミュニケーションの結果、どうなったか、その責任の半分は自分にある。
言ったことで起きたこと、言わなかったことで起きたこと、その責任は自分が引き受けるということです。
この4つ、簡単にできることばかりではありませんが上手に伝えるためのエッセンスがありそうです。
2つのノン・アサーティブコミュニケーション
アサーティブコミュニケーションのエッセンスに触れたところで、次にアサーティブではないコミュニケーションを2つ見てみましょう。おそらくイライラしてキツい言い方になってしまう人は前者の攻撃型です。
攻撃的なタイプ
このタイプの人は自分の気持ちや主張を相手に伝えることはできます。ただ、相手の気持ちや意見を尊重できないことも多く、結果的に自分の意見を押し通して相手の意見を無視することになります。自分のことを第一に考えて、他の考えが入ってこなかったり、相手に共感して相手の思いを想像することは苦手な傾向があります。勝負にこだわる人も多いです。
受身なタイプ
一方で、相手の気持ちや意見はわかるけど、自分の意見が言えないタイプの人は受身なタイプです。このタイプの人は自己主張が苦手で、曖昧な表現が多く、頼まれると断れなかったり、自分より相手を優先してしまう傾向があります。意見をうまく伝えられないという点でノン・アサーティブです。言い訳が口癖になっていたり、相手に気を使える反面、相手に対しても同じような気遣いを期待することがあります。
私は人に合わせてしまう面もあったので自分の意見を言えない時もありましたが、イライラしたときは攻撃型でした。攻撃的なコミュニケーションはやめたいと思っていたものの受身なタイプにはなれないと感じていました。イライラした時に受け身になるなんて全く理解できませんでした。笑
でも、アサーティブコミュニケーションはこの2つのどちらでもない第3の答えです。
アサーティブコミュニケーションでは自分の意見は伝えますが、相手の意見も尊重します。最初にこれを聞いた時、私は「そんなのどうやるの?」って思いました。
どんなふうに実践するのか見ていきましょう。
イライラする人のためのアサーティブコミュニケーションの実践「DESK法」
アサーティブコミュニケーションには4つのステップがあります。頭文字をとってDESK法と呼ばれています。
では、DESK法のステップを見ていきます。
Describe(描写)
最初のステップでは感じたことではなく、事実を見ます。「部下の仕事が遅い」ではなくて「期日から1日過ぎているけど報告がない状態」とか「2回確認したけど、まだちゃんと返事が来ていない」とかそういう感じです。怒りに振り回されると事実と感じていることがごちゃごちゃになってしまうものです。
Explain(表現)
自分の気持ちを表現するステップです。怒りを上手に伝えるって、怒りを我慢して抑えることとはちょっと違います。
イライラしたときに我慢してなかったことにしたり、うまくコントロールしたりすると怒りが溜まって、より激しくなります。怒りは何かを守りたい、大切にしたいメッセージなので無視してはいけません。
まずは自分が何に腹が立っているのか、本当はどうしてほしいのかを素直に感じるのがおすすめです。腹が立っている相手に言いたいことや文句を思い切り紙に書いたり、どうしてほしいかを素直に言葉にしてみてください。(相手に渡す必要はありません。)
落ち着いたら相手に伝わるような言い方を考えてみてください。「納期に遅れそうなら連絡してよ(怒)」ではなく「こちらが手伝えることもあるので、遅れそうな時は連絡して」とかそういう感じです。ちゃんと自分の気持ちを聞いて怒りが少し落ち着いた状態だと考えやすくなります。
Specify(提案)
相手にしてほしいことを具体的に依頼するステップです。「期日の数日前に状況を報告してもらえるか」とか「こちらから確認したときに返事をすることを優先してもらえるか」とかそういったことです。前の段階で自分の感情をしっかり感じて素直に認めていると相手が承諾してくれるものを考えやすくなります。
Choose(選択)
代替案を考えておきます。上手に物事が伝えられない時は相手との距離が近くなっている時です。相手との距離が近くなると相手に拒否権があるのを忘れがちです。私は相手がこちらの要求を飲む前提になっていることがよくありました。でも、相手にも断る自由があるので代替案が必要です。
実はこれをあらかじめ伝えることよりも、相手に拒否権があると認識しておくことが重要です。こちらが相手の拒否権、自由を認識していることで、相手にその自由な感じが伝わり、コミュニケーションがスムーズになります。
この4つのステップを相手が受け取りやすいように伝えるのがアサーティブコミュニケーションです。
例えば部下が仕事が遅れているのになんの報告もなくてイライラした時なら、「遅れるなら早く連絡してよ」「ひとこと言えよ」って思いますよね。そういう時は例えばこんな感じで伝えます。
1、Describe
先週、期日を過ぎてから状況の連絡をもらったんだけど(事実)
2、Explain
期日が過ぎてから分かると他の仕事に影響が出てしまって困ってしまうので(感じていること)
3、Specify
早めに言ってもらえたら手伝ったり、仕事を別の人に振ったりできるので、1週間前には状況を教えてもらうことはできますか。(相手が受け取りやすいように)
4、Choose
こちらからも確認するのでそのときは優先的に対応してもらえますか。(代替案)
「もっと早く言ってよ!そうすればもっと楽だったのに」っていうより全然伝わりそうですよね。
うまく使うポイント
アサーティブコミュニケーションを使って上手に怒りを伝えるには、自分の気持ちを大切にすることが何よりも大切です。伝え方にフォーカスしがちですが、イライラを抑えたまま言うとそれが相手に伝わって、言葉はアサーティブでもアサーティブなコミュニケーションにはなりません。我慢したり、考えたりした時間だけしんどくなってしまうかもしれません。
自分が何が嫌で、何をして欲しいのかを感じて少しスッキリしてから話すだけでもだいぶ印象が変わります。
また、相手にも拒否権があることを認識してから意見を伝えるようにするのも重要です。それを認識しているだけで押し付けている感じが減り、話を聞いてもらいやすくなります。
感情を感じる少しの時間、相手の拒否権への意識ひとつで大きく変わるので試してみてくださいね。
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